2024.04.30 生保協会 定例会見 「着眼点」の対応など報告 子育て支援や地球環境の課題解決への取組示す 顧客の最善の利益を追求 外貨建保険ガイドラインを改正

 生命保険協会(清水博協会長)は4月19日、東京都千代田区の同協会会議室で定例会見を開き、次期協会長に明治安田生命の永島英器社長が内定したことを報告した。また、清水協会長は、①「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」のフォローアップを踏まえた対応②外貨建保険の販売・管理等態勢の改善③生保会社の資産運用を通じた「株式市場の活性化」と「持続可能な社会の実現」に向けた取り組み―の三つについて説明した他、「子育て支援等に係る報告書・情報提供冊子」と「地球環境等の課題解決に資するハンドブック」を作成したことを報告した。また、清水協会長は「令和6年能登半島地震」について被災者に対してお見舞いの言葉を述べた上で、「生命保険業界として今後の状況を注視し、適時適切に対応していきたい」と語った。
清水会長はまず、昨年の協会長就任時の所信の中で注力するとした三つの取り組みについて報告した。一つ目の「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」については、アンケートを通じて、会員各社の取り組み状況や課題などを確認し、必要に応じて「着眼点」を更新しフォローアップを継続的に実施していると説明した。
また、「お客さま本位推進会議」で、各社の高度化に向けた取り組みや不適正事案に対する再発防止取り組みを共有したことに加え、消費者団体や弁護士などからの具体的な事例を交えた態勢構築に資する情報提供を共有した他、フォローアップアンケートでは、営業職員チャネルを有する全ての会員各社が「着眼点」に記載されたプリンシプルに対応した取り組みを実践しており、「コンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化」の強化に向けて取り組みを進めていることを確認したと報告した。
 「着眼点」に関するフォローアップアンケートの結果や、お客さま本位推進会議で共有された各社の取り組みの中で見られた新たな取り組みについては、「着眼点」の「参考となる取組等」に追加し更新された。管理者の役割に不適正事案の未然防止が含まれることを規定上明確化すると同時に管理者が当該コンプライアンス対応を推進する環境を整備することや、顧客との間で一切の現金を授受しない完全キャッシュレス化を実現する取り組みなどを紹介した。 
 また、「着眼点」の更新にあたって、4月19日に開催した営業職員チャネルを有する会員各社の代表者が集まる意見交換会では、経営トップが力強いリーダーシップを発揮して、「着眼点」の内容を参考にしながら、自社のリスクを踏まえた体制強化に取り組む必要性をあらためて認識したとし、「生保協会としても会員各社の取り組み状況等を確認し、必要に応じて着眼点を更新するなど継続的なフォローアップに注力することで会員各社の取り組みを支援していく」との考えを示した。
 二つ目の「外貨建保険の販売・管理等態勢の改善に向けた取組」については、金融庁が公表したモニタリング結果で販売会社、元受会社における金融商品の販売管理等体制の改善に向けた課題が見られたことに加え、金融庁と生保協会の意見交換会で外貨建保険の販売管理等体制の改善に向けて取り組むべき事項が提示され、業界としての対応の検討を要請されたことを報告。こうした金融庁の課題意識や要請等に加え、全国銀行協会と生保協会の意見交換の内容も考慮し、外貨建保険が中長期にわたり加入することでリターンが期待できる商品であり、顧客の最善の利益を追求するという観点から、4月3日付でガイドラインを改正したと報告された。改正したガイドラインについては、年齢や投資経験、リスク許容など想定する顧客の特性を踏まえた、より丁寧な販売・運用機能、他の金融商品との比較説明の充実などについて記載された。生保協会では改正したガイドラインを踏まえた取り組みを促進していく方針。
 三つ目の生命保険会社の資産運用を通じた「株式市場の活性化」と「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みについては、同協会では、株主・投資家双方の立場から提言を取りまとめた報告書を公表しているが、今般実施した株式市場活性化と持続可能な社会の実現を企図した23年の活動等に関するアンケート結果を基に、資本コストや株価を意識した経営などを踏まえた内容で提言を見直したことを報告した。
 次に、「子育て支援等に係る報告書」および情報提供冊子「知っておきたい子育てに役立つ知識 子育て支援制度」を作成したことを報告。「子育て支援等に係る報告書」は、少子化という課題に対し、保険業界が果たす役割をあらためて発信することで、社会全体の子育て支援の機運高揚に貢献するとした。情報提供冊子は、地域の子育てを支える取り組みの後押しとして、国や地方自治体等の子育て支援制度や子育てに役立つ情報等をまとめていると紹介。
 「地球環境等の課題解決に資するハンドブック」については、持続可能性に関する議論が気候変動や生物多様性等の地球環境から人権・人的資本等の社会課題へと広がりを見せている状況を踏まえ、会員各社が活用するための基礎編、応用編の2種類のハンドブックを作成したことを報告した。同ガイドブックの内容を踏まえ、会員各社の担当者を対象に有識者による勉強会を実施しており、引き続き生命保険協会としてさまざまな社会課題の解決に貢献して考えを示した。
 「令和6年能登半島地震」への対応については、大規模災害対策本部を設置し、被災者に一刻も早く安心してもらえるように最大限の配慮に基づいた対応を行うこと、また会員各社による被災した契約者等への対応(安否確認や保険金等の支払手続き等の案内、迅速な保険金等の支払等)を積極的に支援する基本方針を示した。
 なお、能登半島地震による24年3月28日時点の生命保険業界全体の支払状況等については、死亡保険金が269件約12.3億円、入院給付金等が129件2190万円で、合計398件約12.5億円となっている。保険料払込猶予期間の延長が4970件、照会・相談件数は3900件となっている。

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