2024.04.19 金融庁 外貨建一時払保険等の販売状況でモニタリング結果公表 乗換販売によるパフォーマンス劣後を指摘 「全ての重点モニタリング先でリスク・リターン検証が行われていない」

  金融庁は4月3日、2023事務年度上半期に実施した顧客本位の業務運営に関するモニタリングで把握した実態をもとに、販売会社および組成会社において外貨建一時払保険や仕組預金といったリスク性金融商品の導入・販売・管理等を行うに当たり共通となり得る課題を、中間報告として取りまとめ公表した。厳しい指摘が列挙されており、金融庁では「本モニタリング結果を参考に、顧客本位の業務運営の確保に向けた取組みを改善するにとどまらず、ベストプラクティスを目指した取組みを促進すること、また、こうした取組みを通じて国民の安定的な資産形成を支援することを期待する。その際には、必要に応じて、販売会社と組成会社が連携して取り組むことを期待する」としている。
 金融庁は2023事務年度のモニタリングで、外貨建一時払保険や仕組預金、仕組債、外貨建債券といったリスク性金融商品の販売状況を着眼点として検証・対話を実施している。「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」)等を踏まえ、販売会社および組成会社による顧客本位の業務運営を確保するため、実践状況の把握・改善に向けてモニタリングを実施しており、今回の中間報告のモニタリング対象は、質問票の送付や資料提出依頼を行った地域銀行グループ13先、主要行等6行、保険会社8社(以下、重点モニタリング先)だった。
 中間報告では、①外貨建一時払保険と仕組預金のプロダクトガバナンス、販売・管理態勢②外貨建一時払保険の運用パフォーマンス分析を踏まえたターゲット型保険に関する販売・管理態勢③外貨建一時払保険における顧客の属性に応じた販売・管理態勢―以上の検証結果を取りまとめている。なお、外貨建一時払保険については、プロダクトガバナンス態勢および他のリスク性金融商品との比較説明では運用の側面が大きい商品を、顧客の属性に応じた販売・管理態勢では運用型・保障の側面が大きい商品双方を対象に検証している。
 ①外貨建一時払保険のプロダクトガバナンス、販売・管理態勢の検証結果
 プロダクトガバナンス態勢に関しては、「販売会社および組成会社に求められる事項」として「まず、適切な検証期間の下でリスク・リターンの合理性などを十分に検証すべき」としているが、「モニタリングで判明した課題」として、「全ての重点モニタリング先でリスク・リターン検証が行われていない」と指摘した。
 また、「顧客の最善の利益追求に資する商品導入の判断、商品性の事後検証と見直し・廃止」という課題についても、「販売会社および組成会社に求められる事項」として「リスク・リターンを十分に検証等した上で、顧客の最善の利益に資する商品の導入を判断すべき。また、導入後も、販売実績等を基に商品性を事後検証し、必要に応じて商品性を見直し・廃止すべき」であるのに対し、「モニタリングで判明した課題」として「全ての重点モニタリング先で実施されていない。トータルリターンを把握しないまま、『積立利率』といった表面利回りの情報等に基づき、実質的な議論なく、導入を判断」しているとされた。
 販売・管理態勢に関しては、「顧客の属性に応じた販売」という課題では、「販売会社に求められる事項」として「顧客の資産・収入状況、取引経験、知識、取引目的・ニーズおよび判断能力等の属性に応じて、当該顧客にふさわしい商品を販売・推奨すべき」とされるのに対し、「モニタリングで判明した課題」として「多くの重点モニタリング先で、知識・投資経験の不足や投資方針との不一致に懸念がある顧客に販売」しているとされた。
 また、「他のリスク性金融商品との比較説明」という課題では、「販売会社に求められる事項」として「顧客が投資判断に必要となるリスク・リターン・コスト等について、『原則』等を踏まえ、他のリスク性金融商品と比較しながら説明・提案すべき」とされるのに対し、「モニタリングで判明した課題」として「全ての重点モニタリング先で適切に実施されていない。多くの重点モニタリング先で、比較説明しているものの、マネープランガイド等によるリターン・コスト等の大小比較や、保険商品間での重要情報シートの活用にとどまる」とされた。
 ②外貨建一時払保険の運用パフォーマンス分析およびターゲット型保険に関する販売・管理態勢の検証結果
 金融庁が、代表的な外貨建一時払保険(運用型)8商品の運用パフォーマンスを分析したところ、2023年8月末時点での運用終了分(継続期間2.5年)の外貨建一時払保険は、継続期間5年以上の同保険(または同種商品に投資する先進国債券の投資信託)と比べて劣後していることがわかった。
 現状の販売・管理態勢の下では、ターゲット型保険を中心に、外貨建一時払保険購入後4年間で約6割の解約等が発生しており、同保険組成時の長期運用前提の想定より契約継続期間が短期化している。また、解約等に伴い発生する費用が利幅を押し下げている状況がうかがわれるとされた。
 ターゲット型保険に関する販売・管理態勢については、「全ての重点モニタリング先で、運用型商品の一つであるターゲット型保険のほとんどが目標値に到達すると解約され、同時に同一商品を同一顧客に販売する事例が多数発生している。こうした乗換販売によって販売手数料等が二重に発生することを考慮すると、顧客にとって経済合理性があるとは言えない。販売会社は、目標値到達前に顧客に対して無償で目標値の引き上げが可能である旨を伝達した上で顧客の意向を踏まえてアドバイスするなど、顧客を適切にフォローアップすべき」と指摘された。
 「多くの重点モニタリング先で乗換販売の実態を把握していないほか、顧客本位の業務運営を確保する観点からの実効的な検証・監査ができていない」「全ての重点モニタリング先で、保障・相続ニーズがある顧客にターゲット型保険を販売しているが、少なくとも、中途解約した顧客については、これらのニーズを充たせていないと考えられる」と厳しい指摘が行われた。
 ③外貨建一時払保険における顧客の属性に応じた販売・管理態勢の検証結果
 多くの重点モニタリング先で、「元本毀損するとは聞いていない」といった苦情が発生しているため、金融庁が当該保険を販売した287人の顧客カードを分析したところ、全体では2割で知識・投資経験の不足や投資方針との不一致に懸念があったという。苦情が発生した顧客(87人)に限れば、その割合は3割弱となるとのこと。
 「適切な動機付け」という観点では、全ての重点モニタリング先で、ターゲット型保険については、乗換販売といった顧客にとって経済合理性があるとは言えない事例が多く確認されていると指摘された。
 金融庁は「ターゲット型保険に係る役務を見ると、全ての重点モニタリング先で、初年度の負担(商品説明・契約等)に比べ、2年目以降から満期までの合計負担(顧客へのフォローアップ等)の方が大きい状況が見受けられる。一方、販売会社が保険会社から受け取る手数料体系を見ると、全ての重点モニタリング先で、初年度の比重が高いL字型(例えば、初年度5.5%、2年目以降0.1%等)が採用されている」「こうした役務に係る負担に見合った手数料体系となっていないことが、乗換販売につながっている一因と考えられる」と指摘。本件に関して外貨建一時払保険を含むリスク性金融商品の手数料体系が過度にフロービジネスを助長する販売姿勢に影響を及ぼしていないか、検証を継続していくとしている。

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